マンション下のお店は我が家も同然

自分が住んでいる、もしくは住んでいたマンションにお店が入っていたことはあるだろうか。
私には何度もある。生まれ持って住んでいた家にはそんな大層なものは無かったのだが、社会に出て次々と借りた賃貸マンションの1階部分には、イタリアン、中華料理屋、美容室、自転車屋、コインランドリー。色々なお店があったのだ。
飲食店であれば、夕飯の支度が面倒なときはエレベーターで1階に降りればパスタが出てくるし、髪の毛が言うことを聞かなくなったら下りるだけでまともにしてもらえる。洗濯機が壊れようもんならコインランドリーの中の洗濯機が「僕たちががいるよ~」とお声がけをしてくれる。
まるで執事がいる大豪邸のような感覚に近いが、実質執事付きの大豪邸では無く、ただの素晴らしい福利厚生だった。
現在の住まいにはそんな福利厚生は存在しない。あるのは各部屋の何も入らないサイズのポストたちとチラシまみれのゴミ箱だけだ。
そもそも1階のお店の有無が引っ越す際の絶対条件では無い。別にあっても無くてもどちらでもいい存在なのだが、いざ引っ越してしまうと、なにか日常の物足りなさに気づく。
1番その”物足りなさ”感じる瞬間は、手持ちのアイコスの種が切れたときだ。
基本、外には出たくない性分とヘビースモーカーの性質のおかげでカートン買いをしているのだが、無くなった際には絶望という2文字に駆られてしまう。なんせ近くのコンビニまで100メートル近くもあるのだ。
たったそれくらい…と思うのも当然と言える。だが、何かしらギリギリの状況ならばどうだろうか。
例えば寝起きの状態、外は大雨としよう。ルーティンとして、一発目にキッチンへ行き、アイコスの種に手が伸びる。中を開けたらすっからかん、すかさず予備を探すけれど、あれ?見つからない。
寝ぼけ眼の私はそこで完全に目覚めるのだ。絶望という感情と共に。
絶望の理由は1つ。大雨の中、遠くまで買いに行かなければならないからである。パジャマのまま交通量の多い大通りを練り歩く勇気はさすがの私でも無い。もちろん着替えるという発想などは、はなから無い。
あぁ、せめてマンションの下にコンビニがあれば…本来のままの姿で下に降りるだけで済むと切に思う。
そんな物足りなさを嚙み締めつつ、ふと考えた。マンションの1階共用部に本当に必要な店舗は何か。
個人的には絶対的にコンビニだろうと思うのだが、世間はどうなのだろう。

現在、総務省の「住宅・土地統計調査」によれば、「店舗その他の併用住宅」は全国でおよそ65万戸前後となっている。そのうちマンション形式であると10%弱が該当する。※推計
確かにコンビニが下にあると嬉しいが、他にあると嬉しいものとは何なのだろうか。
結論、各サイトによる統計ランキングはこうだ。
1位 コンビニエンスストア
まず、1番人気なのはさすがの不動の人気、コンビニだ。聞かなくても分かる。
24時間営業で、夜間、急に必要になったものをすぐに手に入れられる。ATMまであると来たら自宅の半径10メートルから一生出なくていい生活も可能である。
2位 ドラックストア・薬局
日用品、医療品、ベビー用品など幅広く対応。
なるほど…といったところだろうか。どっかしら入ってるだろうけど2位は意外と言えるのかもしれない。
確かにコンビニより食品を除いては充実度がまるで違う。それに薬が豊富なのはデカい。1人暮らしでむなしく風邪をこじらせてしまった際には”生きる為の天国”のような場所である。
ただ24時間営業かと言われれば素直に首を縦にしづらい点はあるが、ぜひ、ドラックストアのお菓子はなぜあんなに安いのかを深掘りしてみたいものだ。
3位 スーパーマーケット
確かにスーパーは全人類にとって嬉しいはずだ。まず、まとめ買いや食料調達が簡単。液体類や冷凍ものなども1階にあればかかってこいといったところだろうか。
そして、何といっても品揃えが豊富。焼き立てパンや惣菜コーナーなどもあり、温かみのある食品が食べられる。野菜は地元農家と提携して無農薬野菜などを取り扱うこともあるので、ジャンキー(言い方)からオーガニック信者まで幅広い層に愛されるお店と言えるだろう。今どきは宅配サービス、ネットスーパーなどもあるが、まぁ下であればあまり必要ない。
4位 100円ショップ
100均は大好きだ。日常的に使う消耗品などが手軽に揃えられる。なにかと緊急時に安価で目的の品が手に入るのはありがたいことだ。
そして、なんとなく100均に行きたいな~って思うときにプラっと行くにはめんどくさい場所にしかなかったりする。デメリットといえば金銭感覚がバグることだ。
5位 カフェ・スイーツ店
外食気分や友人とのちょっとした時間に便利である。甘いものやコーヒーは気分転換やストレス解消につながるし、勉強や仕事の合間の休憩にも最適だ。
そしてデートや親しい友人と何気ない近状報告、打ち合わせなど、人と会う場所として利用価値が高い。非日常体験も出来、おしゃれな空間や珍しいスイーツは、日常に小さな「特別感」を与えてくれることに違いない。
気軽に立ち寄れて、テイクアウトやデリバリーにも対応している店舗が多く、生活に組み込みやすいのもあってよかったと思える要素だろう。
他にも医療機関、主に内科、小児科や、布団を洗う際のコインランドリーなど”あったらいいな”は山ほど存在する。
やはりメリットは大きくあるのが分かったが、デメリットという点ではどうだろうか。

直近のワイドショーでマンション1階店舗のラーメン屋のニュースがあった。
管理会社から法外な不当請求をされたという内容だ。
共用部での喫煙は1回5万円、共用部への違反駐輪は1万円など、細かく罰金を支払うように命じた通知がお店に届いたという。
よっぽど荒れていたのだろうか。
正直、これはお店の管理不足の過失というよりも、客の素行のを悪さを感じざるえないのだが、こういった”騒がしさ”はデメリットの1番の原因と言える。
お店があるということは、共用部分が住人以外も利用するのも事実。
24時間営業のお店だと夜中に騒音で起こされる…なんてこともあるかもしれない。
あとは換気扇の煙がモクモクした飲食店などは、外干しの洗濯物に悪影響の可能性が高い。
せっかく天気の良い日に、お気に入りの良い香りの洗剤で洗ったものも、”ニオイが移っちゃった…”ということも避けられないのだ。
とはいえ、自分のテリトリーの1番近くにお店があるのは何かしら便利である。デメリットの部分は管理会社や住人と相互理解をすれば、今後、より良い環境、我が家も同然として快適に過ごせるのではないのだろうか。
私は引っ越しをする予定は今のところ無いのだが、次、引っ越しをするならば、1階部分にコンビニがあるマンションを候補に入れるだろう。